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  ◆ やぶ医師のひとりごと       第 109 号  ◆
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 H20年2月1日発行 購読者数 11944名
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 ブログ: http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/
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  <本日のテーマ> 心不全21(心不全の治療9)
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今日も「心不全の治療」についてです。
まずは、先週までの復習。
●心不全とは
 ○「心不全」というのは、「病気」ではなく、「病態」。
●心臓の役割
 ○「心臓」は、血液を循環させる「ポンプ」の役割をしている。
 ○心臓のポンプ機能が低下した状態の事を「心不全」という。
●心不全の症状
1)心臓(ポンプ)の出力低下による症状
 ○疲れやすい、頻脈、動悸、息切れなど運動能力の低下
2)肺のうっ血による症状
 ○呼吸困難、起座呼吸、咳、痰(ピンク色の泡状の痰)
3)腎臓のうっ血による症状
 ○尿量が減り、体重が増える。
4)消化器のうっ血による症状
 ○食欲低下、吐き気、お腹の張り
5)全身のうっ血による症状
 ○体のむくみ
●心不全の重症度(NYHA分類)
 ○NYHA I~IV度
 I度が軽症で、IV度が重症
●心不全の原因となる病気
 1,心筋不全によるもの
 ○心筋梗塞、心筋症、心筋炎、老化心
 ○貧血、慢性の肺疾患
 ○甲状腺機能亢進症、低下症、脚気など
 2.機械的障害
 ○心臓弁膜症
 ○先天性心疾患(生まれつきの心臓の病気)
 ○心臓を包む膜の病気
  「収縮性心外膜炎」、「心タンポナーデ」
 ○高血圧
1)長期の徐脈(遅い脈)
 ○洞機能不全症候群、完全房室ブロックなど
2)長期の頻脈(速い脈)
 ○心房細動、発作性上室性頻拍症など
●心不全の検査
 ○胸部レントゲン写真、心電図、血液検査
  心臓カテーテル検査、胸部CT、MRI等
●心不全の治療
 ○「心不全そのもの」の治療に加えて、
  「心不全の原因となる病気」の治療もある。
●急性心不全の治療
 ○メインになるのは利尿剤(おしっこを強制的に出す薬)
 ○利尿剤(利尿薬)には、点滴と飲み薬がある
 ○血管拡張薬(点滴と飲み薬、両方ある)
 ○血圧が下がれば、血圧を上げる薬
 ○不整脈が出れば、不整脈を止める薬、等
●慢性心不全の治療
 ○利尿剤(飲み薬)
 ○血管拡張薬(飲み薬)
 ○心臓の負担をとる(興奮する方の神経を抑える薬)
●心不全の原因となる病気の治療
 ○心筋梗塞、不安定狭心症が原因の心不全の場合、
  血管内手術で、心臓の表面の血管(冠動脈)を広げる。
 ○心臓の弁が悪くなる病気の場合
  根本的な治療は、心臓の弁を交換する「手術」しかない。
●心不全の原因となる病気の治療
 ○不整脈が原因の場合
  基本的には薬による治療。
  薬では無理な場合は、カテーテルアブレーションを
  行ったり、ペースメーカーを植え込む場合もある。
 ○心臓以外の病気が原因の場合。
  貧血の原因となる出血、鉄不足等の治療をする、
  肺の病気の場合、薬を飲む。
  甲状腺の場合は、基本的には薬の治療。
  脚気の場合は、ビタミン剤を飲む。
「心臓」は、血液を循環させる「ポンプ」の役割をしています。
で、そのポンプの機能が低下した状態が「心不全」です。
「心不全の症状」として、疲れやすさや、息切れ、動悸、
呼吸困難、咳、痰などがあります。
そして心不全の原因となる病気には、心筋梗塞、心臓弁膜症、
高血圧、徐脈や頻脈等の不整脈があるんですよ。
そいで、「心不全の治療」の基本は、
体の中に貯まった水分を、体の外に出してあげる事です。
それに加えて、「心不全の原因となる病気の治療」もあります。
心筋梗塞や、重症の狭心症の場合は、血管内手術をして、
心臓の表面の血管(冠動脈)を広げる治療する。
心臓の弁が悪い場合は、弁を取り替える手術。
不整脈だと、薬やアブレーションっていう治療をする、
って話でした。
んで、今日も「心不全の治療」についてです。
●心不全の治療
心不全の原因となる病気の治療に関しては、
先週までのメルマガで書いてきたんだけど。
心不全の原因となる病気の治療ができない心不全。
っていうのもあるんですよ。
どんな病気かっていうと、「原因不明の病気」です。
原因が不明だから、治療もできないんですよ。
具体的には「拡張型心筋症」っていう病気です。
国に「難病」(特定疾患)として指定されている、
いわゆる「不治の病」と言われるものです。
どんな病気かっていうと、
心臓を風船に例えると、「古くなった風船」のイメージです。
輪ゴムでもそうですけど。
ゴムが古くなると、あんまり伸びないですよね。
で、だらーん、と長くなっちゃう、輪ゴムが。
そんな感じ。
拡張型心筋症って病気の場合。
心臓が大きくなって、古いゴムの様に
伸びる力も縮む力もないので、
十分に収縮できないから。
「心不全」になるんですよ。
一般的な心不全の治療である、飲み薬とか、
すごく悪い場合には点滴の注射とか。
そういう治療はしますけど。
拡張型心筋症の心臓そのものを治す方法は、
今のところありません。
ところで、話はちょっと変わるけど。
「バチスタの手術」って聞いたことありますか。
世界的には超マイナーな手術なんだけど、
聞いたことある人もいるかもしれませんね。
「医龍」っていう漫画、テレビで出てきた手術だからねー。
それで日本では結構有名になりましたね、この手術。
この「バチスタの手術」っていうのは、
「拡張型心筋症」の手術なんですよ。
拡張型心筋症っていうのは、心臓が大きくなって、
十分に収縮できないっていう状態だから。
大きくなった心臓の一部を切り取って、
小さくして、心臓が収縮できるようにしてやる、
っていう手術です。
バチスタさんが考えたから、バチスタの手術って言います。
発想が斬新ですよね、このバチスタさんの考え。
でも、10年くらいは、世界中で行われたんですけど。
やっぱり、この手術は効果がない、って事になったので。
もう、日本以外では、ほとんどこの手術は行われていません。
「バチスタの手術」に関しては、以前にブログでも書いたので、
もっと詳しく知りたい人は、ブログも読んでね!
「医龍、バチスタ手術」
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-51.html
最近は、飲み薬、バチスタの手術以外にも、
ペースメーカーの特殊なやつ。
両室ペーシングをしてくれる、ペースメーカーってやつも、
治療では使われるようになったんですけどね。
やっぱり、それも心臓そのものを治す事はできないんです。
薬や特殊なペースメーカーで安定している人は良いけど。
それでは厳しい、っていう重症の心不全の場合は、
どうしようもないんですよ。
じゃあ、抜本的な治療をするにはどうすればよいのか。
って言うと、心臓弁膜症だったら、「心臓の弁を取り替える」。
だったら、「拡張型心筋症」だったら、
「心臓そのものを取り替える」
って事しかないんですよ。
だってそうでしょ、原因不明で、心臓そのものが悪いんだから。
言い方を変えると「心臓移植」になります。
腎臓や肝臓だったら、生体腎移植、生体肝移植っていって、
生きている人から移植する事もできるんだけど。
心臓は、生きている人からは移植できないですからね。
脳死した人を待つしかないんですよ。
でも、日本では年に数例か、多くて10例くらいしか、
脳死移植は行われていませんから。
何千万円とか、一億円とか出して、海外に行く、
というのが現実的な選択になりますかね。
心臓移植の場合。
そんなわけで、今日も「心不全の治療」、
特に拡張型心筋症の心不全の場合、についてでした。
そいじゃあ、今日はここまで。
いつものように、下にまとめを書いておきますね!
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【今日のまとめ】
●心不全の治療
 ○拡張型心筋症の場合
  飲み薬や点滴の薬による治療。
  両室をペーシングする、特殊なペースメーカーを植え込む。
  どちらも、根本的な治療ではなく、
  完全に治すには、「心移植」しかない。
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